Valuation

ご案内のとおり、会社法になってからは、ストックオプションの発行時の公正な価値が会社が労働者から受ける役務と比較して、「特に有利」でなければ株主総会決議は不要という解釈になりました。
isologue: 会社法下の転換社債(転換社債の新株予約権部分には価値は無いのか?)

「労働者から受ける役務と比較」する対象が、ストックオプションの発行価額ではなく、「発行時の公正な価値」となっているところがミソなんでしょうか? 無償発行したとしても、その本来の価値が労働者から受ける役務に対して有利でなければ総会は必要ないというように読めますが、総会の決議事項に盛り込むか否かを判断するには、やっぱりオプションのvaluationを行わなければならないことには変わりないのではないでしょうか。オプションのvaluationよりも「労働者から受ける役務」の価値計算の方が難しそうな気がするんですがw

いつもながら大変参考となるエントリで、幾つかの要点をかいつまんでまとめただけで転換社債型新株予約権の評価や会計についておさらいが出来てしまいます。

  • この5月からストックオプション会計が導入されて、単独の新株予約権(ストックオプション等)や、「転換社債型」の要件を満たさない新株予約権付社債については、オプションの価値を認識しなければいけなくなった。
  • しかし、「転換社債型」の要件を満たすものについては、引き続き「一括法」が認められることにより、新株予約権部分のオプションバリューを区分して開示する義務はない。
  • 義務がないということは、「価値が無い」と考えていい?ということか?
     → 「新株予約権の発行価額が無償」というのは、「オプションバリューの価値がゼロ」という意味ではない。
  • 転換社債の場合には旧商法時代から「オプションバリューがゼロでないものを無償発行しても、(金利がその分削減される分など)と比較して特に有利でなければ有利発行にはあたらず、株主総会の特別決議は不要」(平成14年2月28日 日本証券業協会「転換社債に関するワーキング・グループ」)

うーん、「(金利がその分削減される分など)と比較して特に有利でなければ有利発行にはあたらず」なんて言ってますが、では本当に有利でないことを証明するためにはやはりオプション部分の評価を行って金利減免分と比較する必要があるということになりますが、単にValuationを忌避するための免罪符としているようにしか思えないのですが。

金融工学とかやってらっしゃる方が素直に「無償発行=オプションバリューがゼロ」と読むと、(中略)オプションバリューがゼロになるわけないじゃん!」と思われると思いますが、

私は金融工学などさっぱりですが、それでも単純に「ゼロになるわけないじゃん!」とは思いますよ。「当局」もゼロではないと言っているものの、現実の評価作業については逃げ回っているようにしか見えません。Black-Sholes ModelならExcelで簡単に計算できますし、B/Sモデルはヨーロピアン・タイプ用だから駄目というのであればbinominalに関しても下記のように参考になるサイトは沢山あるわけで、頭のいい人たちが揃っているのだから、実務家が使いやすいような指針を示してくれればいいのに、と思いますね。

金融大学 オプション取引入門講座 第10回 2項モデル(バイノミナルモデル)
Option Pricing Models and the “Greeks”
Binomial options pricing model

ところで、日立の野村が設計した社債について

なぜバラバラで売った方が高く売れて発行コストも安いのに、はじめからバラバラで売らないのか?と考えると、「バラバラにすると区分法を採用しないといけないから」、ということくらいしか思いつきませんよね。

と仰っていますが、単純に日本の新株予約権付社債は分離できない(旧商法第341条第4項)からなのではないでしょうか? (はずしてますか?)




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