5月 31st, 2006 のアーカイブ

新株予約権に関する会計処理のまとめ

参考 :
実務対応報告第16号
「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」の公表

  • 発行時の会計処理
    「新株予約権は、その発行に伴う払込金額(会社法第238条第1項第3号)を、純資産の部に「新株予約権」として計上する。」

    • [ 新株予約権(1個)の払込金額 * 新株予約権個数 ]を、「資本調達額」欄に表示し、純資産額に加算します。
    • 払込金額が0であれば加算金額も0となります。
  • 権利行使時の会計処理
    • 新株を発行する場合
      「新株予約権の発行に伴う払込金額(会社法第238条第1項第3号)と、新株予約権の行使に伴う払込金額(会社法第236条第1項第2号又は第3号)を資本金または資本準備金に振り替える。」

      • [ ( 新株予約権払込金額 * 新株予約権個数(行使分) + 行使価額 * 行使株数 ) * 資本金組入比率 ]を前ユニットの資本金額に加算します。
      • 資本準備金についても同様です。
      • 資本金組入比率(準備金組入比率)とは、新株予約権発行ユニットにおいて、行使価額中の幾らを資本金あるいは資本準備金に組入れるかを、ユーザーが指定した場合の、行使価額に対する比率です。Defaultは1/2です。
      • 「資本調達額」の金額は、単純に[ 行使価額 * 行使株数 ]となります。
    • 自己株式を処分する場合
      「新株予約権が行使され、自己株式を処分する場合の自己株式処分差額の会計処理は、自己株式を募集株式の発行等の手続により処分する場合に準じて取り扱う。なお、自己株式処分差額を計算する際の自己株式の処分の対価は、当該新株予約権の発行に伴う払込金額と新株予約権の行使に伴う払込金額との合計額とする。」

      • [ ( 新株予約権払込金額 * 新株予約権個数(行使分) + 行使価額 * 行使株数 ) – 「自己持分の取得」ユニットにおける取得額 * 行使株数 ]を「資本調達額」に表示します。
      • (正式には資本剰余金で処理するところですが、当プログラムには純資産の中身を表示する項目はありませんので、総額で加減算します。)
  • 失効時の会計処理
    当該失効に対応する額を失効が確定した会計期間の利益(原則として特別利益)として処理する。」

    • 新株予約権の失効についてのユニットは用意していません(消却はありますが)。
    • その理由は、資本政策案の策定において、初めから失効を予定する新株予約権をプランに組み込むことは考えにくいからです。
    • どうしても新株予約権の失効を組み込みたいときには、
      1. 「新株予約権の消却」コマンドを実行
      2. 8行目の表記を「失効」に書き換える。
      3. 56行目当期利益に「失効に対応する額」を加算

      してください。

今まで(4月までの旧商法では)、会社が発行する新株予約権については、払い込まれた金額(借方または左っかわ)から判断されて貸方(右)の新株予約権の額が決まっていたのが、会社法においての「ノリ」としては、基本的には、新株予約権のオプションバリュー(貸方[右])というものが確固として実在するものと認められて、それが決まってから、借方(左)の「費用」や「社債発行差金」が決まってくる、というイメージになるんじゃないかと思います。
isologue: 会社法下のストックオプション(事例データベース編)

昨今、OptionのValuationにも目が行くようになったのは大変良いこととは思いますが、資本政策案作成支援プログラムはVer6.xにおいても、引き続き旧法の「ノリ」で新株予約権の払込価額を純資産の部の増加金額と認識します。
企業会計基準委員会の方針も会社法第238条第1項第3号の金額を純資産に計上しろと言ってますし。

理由は明白で、会社法の「ノリ」を採用した場合、ほぼ確実に資本政策案が作成できなくなるからです。新株予約権の払込金額の代わりにオプション・バリューをひょいとセルに入れられる人がそうそういるとは思えません。

Black-Sholes Modelで良いなら、Excelに確率密度関数が用意されていますから、パラメータ情報さえきちんと集められれば計算自体は簡単に出来ますが、ご存知の通り、BSMはヨーロピアン・タイプのオプションを前提としています。

と言うわけで、Ver5.xと同じく、新株予約権の払込金額 * 新株予約権個数を資本調達額(純資産額に加算する金額)とします。新株予約権の発行会社による取得、処分、消却時においてもすべて新株予約権の払込金額を基に計算します。

早く、簡便にバリューを算出できる方法が確立されると言いのですがねぇ……。

Technorati Tags: , , , ,

株式の無償割当という制度が会社法において創設されました(会社法185)。これは、株主に対して、所有する株式数に応じた一定割合の株式発行または自己株式の交付を行うことができる制度です。
あずさ監査法人 | 新会社法と公開準備会社の留意点(1)-資本政策【2】 株式無償割当とデッド・エクイティ・スワップ-

会社法の条文だけ読んでプログラムを組んでいたので、「自己株式の交付を行うことができる」点については気づきませんでした。新規発行と自己持分の処分は効果が同じですから、考えてみれば当然ですよね。

という訳で慌ててプログラム改変中です。無償割当増資時に、割当対象株式を発行会社が所有している場合には、株主構成欄中の「自己持分」欄に自己持分株数を表示し、チェック・ボックスにチェックを入れるとテキスト・ボックスが開くようにしました。このテキスト・ボックスにマイナスの数値を入れると、それが無償割当に当たって発行会社が交付する株数となります。

(これは新株予約権の権利行使時と同じ仕組みです。権利行使時の自己持分割当については旧商法に明記されていましたし、会社法に変わっても、企業会計基準委員会の「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する取り扱い」にもその処理方法が説明されています。)

面倒なのは処分時に帳簿価額との差額を損益として認識しなければならないことですね。

—–[ 追記 ]—————–
すみません、脳みそ煮えてました。

新株予約権の権利行使時の会計処理と同様に考えるなら、「募集株式の発行等の手続により処分する場合に準じて取り扱う」(企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準)ということですから、その他資本剰余金(差損がその他資本剰余金で減額しきれない場合にはその他利益剰余金)で処理ですね。

当プログラムでは資本の部の中身を表示する項目はありませんので、総額から加減算することになります。
—–[ ここまで ]—————–

帳簿価額を確認するために、過去に遡って該当する株式の「自己持分の取得」ユニットを検索し、取得価額を把握しなければなりません。念のため、検索はタイトル・ユニットまで遡り、自己持分の取得が複数回あった場合に備えて、それぞれの取得価額の平均値を帳簿価額とすることにしました。平均値を採用したのは、実質的にどの株が交付されたかは確認しようがないですし、後入れ後出し法的なアプローチはプログラムが複雑になるからです。

(処分価格 – AVERAGE(取得価額のセル・アドレス,…)) * 処分株数のアドレス / 100000
この文字列を、56行目の当期利益のセルに加算します。

「自己持分の取得」ユニットの取得価額を確認できなかった場合、すなわちタイトル・ユニットに該当株式が記載されていた場合には価格を確認する事が不可能ですので、損益計算帳簿価額の把握は行いません。

で結局、ファイナンスは無償割当ですから発行による資本の増加は0なわけで、自己株式を処分した場合には、その帳簿価額分だけ純資産額が減少することになります。

[ 再度追記 ]

ややこしいので再整理。ここでいっているケースは、無償割当の際の割当対象となる有価証券を、発行会社が自己持分として所有していたので、割当分の全部又は一部を新規発行せずに自己持分から交付しようとしている場合です。

まず株式の場合。
無償で割り当てる株数が10,000株のとき、発行会社が同種類の株式を3,000株保有していたのでそれを交付することにします。つまり新規発行分は7,000株。
無償割当ですので処分差損=自己持分の帳簿価額となります。これをその他資本剰余金から減額、減額しきれない場合には更にその他利益剰余金を使って減額しますが、何度も言うように、当プログラムでは資本の部の中身を表示する項目はありませんので、総額で処理します。3,000株分の取得価額は取得時に純資産額から控除済みですので、処分時には何もする必要はありません。
新規発行分も無償ですから調達額は0、資本金も資本準備金も増加しません。従って、結局どの項目も弄らなくてよいこととなります。

次に新株予約権の場合
新株予約権を無償割当する場合、目的株式となる株式が同じである新株予約権を自己持分として発行会社が所有していた場合、割当分の全部又は一部を新規発行せずに自己持分から交付できることとなります。
これは自己新株予約権の処分に当たりますから、実務対応報告第16号によれば、受取対価と処分した自己新株予約権の帳簿価額との差額を当期の損益として処理することとなります。
無償割当ですから、やっぱり受取対価は0となって差損が発生し、これを当期利益の額から減算することになりますね。

Technorati Tags: , ,

tim is back

Timが休暇から戻ってきたようです。
O’Reilly Radar > Web 2.0 Service Mark Controversy (Tim responding this time)
まだ読んでません。長いので後で。

Technorati Tags: , ,