11月, 2007 のアーカイブ

たった1本ゲームがコケただけで赤字に留まらず債務超過ですか!? 上場企業にしては珍しい話ですねえ…。

業績不振のさくらインターネット、笹田社長が引責辞任

9月中間期、オンラインゲーム事業の「ロード・オブ・ザ・リングス オンライン」の専用実施権や固定資産について3億9100万円の減損損失を計上。同期の最終損益が5億7500万円の赤字になった上、債務超過に転落した。

391百万円なんて、流行のサブプライム関連の損失額に比べればホンの僅かにしか過ぎないのに債務超過転落とは、元々それほど体力のない会社だったのでしょうか。H20/3-1Q終了時点の連結純資産額が533百万円で、今回の損失計上額が(1)固定資産等の減損損失(連結・個別)391百万円+(2)のれんの減損損失(連結)54百万円+(3)関係会社株式評価損(個別)98百万円+(4)投資有価証券評価損(連結・個別)65百万円、合計608百万円というわけですか、あらまあ。

そのゲーム、サービス開始は6月1日予定だったそうですから僅か半年前だった訳ですが、駄目だと判断したらにスパッと損失計上、うだうだ言い訳せずに責任とって辞めるあたり、この社長さんはなかなか責任感のある誠実な方ですね。しかしその後の事業の一部を関連会社に譲渡して300百万円の益を捻出し、更にその関連会社を300百万円で売却しようという策はいかにも苦しいです。

新社長さんのblogでは下記のように記載されておりました。

決算下方修正について

オンラインゲーム事業では、上半期(4月から9月の6ヶ月間)に2億8千万円弱の売上を見込んでおりましたが、結果としては4千万弱の売上という、約2億4千万円の大幅な乖離が発生しており、これ以上続けることによって、好調な本業を立ち直れないものにしてしまう可能性があるとの判断から、今後発生しうる損失を全て先に計上すると言う、苦渋の決断へと至っております。

「今後発生しうる損失を全て先に計上する」と書かれていますが、恐らくゲーム運営は継続しないでしょうから、「今後発生しうる損失」とは将来発生する損失を現在価値に引き直したものではなく、ゲーム関連投資額全体であるとすれば、今回の損失計上額である400百万円弱がオンライン・ゲームを始めるに当たって必要な金額であると想像できます(回線費用は別)。減損額の中身は「オンラインゲーム事業のロード・オブ・ザ・リングス オンラインに関連する工具器具備品、ソフトウェア、専用実施権、リース資産」だそうですが、このゲームの場合には117百万円だった「専用実施権」はゲームによって相当大きく変ってくるでしょうから、一概に400百万円と決め付けられないことは勿論です。

さて、半年間で280百万円の売上を見込んでいたら40百万円しか売れなかったというのは厳しいですね。一体ユーザーはどの程度いたのでしょうか。実際に遊んでいたと思われる方が「7,500円で半年間」と仰っていますから、単純に割り算すると5,333人ということになります(公式サイトによれば1,500円/月だそうで、6ヶ月分の9,000円で割ると4,444人ですか。7,500円とは何らかの割引を加味した値段でしょうか?)。「売れないのは洋ゲーだけでなく、ほぼ6割のタイトルは同時接続者数1万以下の状況にあると思われる」との事ですが、ユーザー数がこの程度であれば同時接続者数はもっと少なかったものと考えられます。また「LotROは地味過ぎるんだよ。後、同時接続1万人以下は9割な気がする」という観測が正しいとすれば、オンライン・ゲーム市場と言うのは(少なくとも国内においては)なかなか迂闊には参入できない分野であることが改めて分りますね。

さくらインターネットってデータセンター屋さんですよね。縁の下の力持ちとして大儲けは出来ないけれど地道に稼いできた人がいきなり派手な舞台に上って見事にコケた感があります。下記の方の分析が辛辣ではありますがよくまとまっております。

さくらインターネット 債務超過転落

それがさくらネットも他のアフォなデータセンター屋と同じく、本業に注力してればいいものをわざわざ欲目をだしてコンテンツ配信事業(この場合はオンラインゲーム)に進出して自滅したそうで。有料会員が集まらずw

そもそも、オンラインゲーム専業のゲームオンとかガンホーとかだって、会員数が増えないことに苦しんでいる有様で。その対策として月額有料会員制→アイテム課金制に移行している、結果として無料会員比率が上がって、会員からカネを取るのに四苦八苦しているわけであります。

「いきなり派手な舞台に上って」などと書きましたが、昨年の段階でDDOというゲームを開始していたようで「いきなり」ではなかったようです。しかし、これについても前期決算において「当該オンラインゲームに関する固定資産の帳簿価額を全額減損して」181百万円を特別損失に計上しているんですね。「コンテンツ配信」事業の売上高は52百万円、営業損失は314百万円だそうで、要するに2つともコケた訳です。

こうなってくると元社長の昔のインタビューが痛々しく見えてきます。

さくらインターネットCEO笹田亮氏インタビュー
ゲーマー社長が推進するIDCとMMORPGの新たな関係

編: 私から見て、「DDO」を選んだ一番の動機は、笹田さん自身が熱心に欧米のオンラインゲームをプレイなさっていたからではないかと思いました。過去にはどういったゲームをプレイなさっていましたか。

笹田氏: そうですね。最初は「Diablo」からスタートして、社内でも流行りました。そして「Ever Quest」、「DARK AGE OF CAMELOT」、「PlanetSide」、「EVE Online」、そのほか色々ですね。英語版のゲームを遊び慣れているというところはあります。

ここだけ読むと「ゲーマー社長」が趣味で始めちゃったんじゃないか、という印象を受けますが、例えそうであったとしても、自分の好きなものを商売にすること自体は別に悪いことではありません。ユーザーであるからこそ細かい点までそのビジネスを熟知している、ということもあるかもしれません。問題はそれを成功に導けるかにある訳ですが、自らがゲームを提供する側になった途端に「生産者側」の論理になってしまっているのが気になりました。

さくらインターネットCEO笹田亮氏インタビュー
ゲーマー社長が推進するIDCとMMORPGの新たな関係

データセンターというインフラを持つ会社が、ゲームをパブリッシングしたらどうなるか、と言うことをお伝えしたかった。そうすることで、日本のゲーム市場ってもっと大きくなるんじゃないかなと。

他のゲーム会社さんの話を聞いてみると、ユーザーからの不満って比較的インフラとか、データセンター周りの回線だとか、24時間体制でないとか、サーバーがダウンした時、復旧どうするの、といった不満が多くを占めている。こういった中でデータセンターと協業していけば、日本のゲーム会社はもっと良いオンラインゲームを出せるのではないか

本当にインフラとか回線とかの問題が「ユーザーからの不満」の「多くを占めている」んでしょうか。勿論、そういったものもあるでしょうが、もっとゲームの内容に関するものの方が多いんじゃないでしょうかねえ。「サーバーがダウンした時、復旧どうするの」なんて緊急時の問題などゲーム始める前から気にしている人なんて、どれだけいるんでしょうか。ましてや「データセンターというインフラを持つ会社が、ゲームをパブリッシングしたらどうなるか」なんてことは、プレイするに当たってユーザーには何の関係もないことです。

結果としてはユーザーを集められなかった訳で、これだけ力強く語っている以上、上記のような問題は発生しなかった(させなかった)のでしょうから、問題はゲーム内容の方にあったのではないかと思う訳です(これについてはネトゲ研究日誌さんのコメント欄で議論が展開されています)。VBにありがちなNeedsを忘れたSeeds Orientedによる失敗を上場してからやっちゃった、というところでしょうか。

元社長 : 「良いクオリティのゲームを作っているのに、インフラのコストが出ないよ、という会社に対して、うちはインフラを提供します。しかも原価が売り上げを超えることはありませんよ。」

現社長 : 「結果としてオンラインゲームにおける大きな原価については本業の収益で吸収され」

原価割っちゃったんですねw

Ver 6.13 を公開しました。

  • すみません。Ver 6.12の修正が不十分だったので再修正です。

新しいプログラムは「1-2.DOWNLOAD」のページからダウンロードしてください。アーカイブ解凍後、ExcelにおいてVer 6.12以前のアドイン登録を解除し、新たにVer 6.13(Fncpln_CmL_613.xla)をアドイン登録してください。

Ver 6.12 を公開しました。

  • 潜在株式欄の認識ミスを修正しました。

新しいプログラムは「1-2.DOWNLOAD」のページからダウンロードしてください。アーカイブ解凍後、ExcelにおいてVer 6.11以前のアドイン登録を解除し、新たにVer 6.12(Fncpln_CmL_612.xla)をアドイン登録してください。